京都で開催している、今期のスキルアップクラスも残すところ3回となりました。メイン講師として最後に登場頂くのは、木村雅子さんで「インプロ」と呼ばれる即興の演劇が専門の方です。決められた台詞が無い即興のお芝居を演じる為には、相手役との信頼感の構築や、心やからだをリラックスさせておくこと、高い集中力や、瞬時の創造性などが必要とされます。それらは、台詞のある演劇にとっても不可欠な要素です。
ワークショップは「シアターゲーム」と呼ばれる「遊び(ゲーム)」を使った、演劇訓練法を基にして組み立てられます。ゲームを通じて、伝え合うことや創造的な表現を「頭」ではなく、「身体的経験」から学んでいきます。
舞台上では、私生活で未経験のことや、普段と違う(慣れていない)振る舞いや言葉遣い、人との関わりを行なう必要があります。また、場合によっては犯罪者役など、普段では受け入れないことを受け入れる必要にも迫られます。これは、頭ではわかっていてもなかなか難しいことです。こころとからだに染み付いた「わたくしを形作る日常の癖(持って生まれた自分の性格といった部分から、人への接し方など社会的な部分も含めた)」から脱して、(舞台の上とはいえ)自由な私(演技できる状態の私)になることは、かなり難しいことで、それをコントロールできるようにするために俳優が訓練を積むことは非常に大切なことです。この「ゲームを使って、自分の可能性を広げる」方法はその練習法として、大変合理的な方法です。なにしろ、楽しくのびのびとできるところがいいのです。
さて、今日もほとんどの時間を使って、からだと頭をどんどん動かすゲームを行ないました。もちろん、全てのゲーム、全てのエクササイズにはそれを行なう目的と理由があります。講師は非常に巧みに参加者の状態を見てエクササイズの組み立てています。
ポイントはいくつかありますが、まずは心とからだをリラックスさせ、心にブレーキをかけず「自由な発想」が自然と出てくる状況を作ること、相手から発せいられた何かを的確に受け取ることや的確に渡すことへの意識や集中を高め、その感覚を磨くこと。そして表現に対して「能動的」になって、表現そのものを自信を持って楽しめるようにすることが今日の主なポイントだったように思います。
表現者はじつは臆病になりがちです。「かつて目にしたなにか(かつて上手くいったなにか)」にすがりたくなるものです。しかし表現者に求められるのはその場で生まれた「新鮮な表現」です。それを生む為に必要な、瞬時の創造性は(過去の何かから離れて)そうしたことをおもしろがる「遊び心」無くしては叶わないと思います。訓練といえばストイックなことを想像しがちですが、ストイックな練習ではそうした遊び心が削られる恐れがあります。
木村さんは、ゲームの途中でいくつかのキーワードを参加者に投げかけてくれます。
例えば「失敗を愛して」とか例えば「わくわくすることが大切」とか「相手に届けるにはエネルギーがいる」などなど、それらはゲーム途中で、実際に行なわれた行為に対してのコメントなので説得力があり、よくわかります。そして、そんなアドバイスに従うことで、ゲームはより楽しいものになります。それは同時に、役者さんの可能性をどんどん広げている言葉だと感じました。なにしろ、役者さんから出てくるものが良くなっていくのですから。
ちなみに、同じ内容のスキルアップクラスを11月〜年明け2月、大阪府高槻市でも開講します。詳細はこちらです。まだ応募可能ですので興味ある方はぜひ受講してみて下さい。