2012年6月13日水曜日

高槻スキルアップクラス最終日

高槻現代劇場を会場に行なわれた、全4回のスキルアップクラスの最終日でした。
本日の講師は平岡秀幸さんで、テーマは「関係性とは何かを知る」ということだったのではないでしょうか。舞台上で役者が相手役の行為(ことば)をどう受け止め、それがどう自分に影響するか(変化として現れるか)について、丁寧に見てゆく(感じてみる・意識する)ワークショップが行なわれました。
 さて、講座の冒頭に参加者から前回まで3回のワークショップの感想を聞いたのですが、複数の方から「思っていたのと違ったので戸惑った」という声が聞かれました。演劇のワークショップなので、「台詞を使うかと思ったら使わない」であるとか、「いいのか悪いのかわからなくて戸惑った」といったなどなど。もっともな感想が聞かれました。
 そして、今日のワークではやっと(4回目にして!)、台詞を使ったのですが、台詞そのものの練習というよりは、その台詞が実感を伴って伝わるため(伝わるようにするため)に、「関係」をつくる意識がいかに重要かが示されました。結局「(舞台上で本物のように見える)関係を作ることのできる身体の状態を知る」ことと「相手役からのアクション(働きかけ)にどう反応するか」という非常に重要で本質的なエクササイズが主な内容となりました。
台詞を期待した皆さんごめんなさい。

 平岡さんが話されていたように、演技の訓練には「表現の訓練」と「表現のための訓練」があって、前回まで3回のワークショップは後者だと平岡さんは思っている、ということでしたが、やはり今回も内容を見る限り「表現のための訓練」だったのではないかと思います。本当の意味で「表現の訓練」にまで到達するには、「表現のための訓練」を十分に経たメンバーによる時間をかけた集団創作など、ある一定の技術レベルと表現に対する高い意識、そして時間が必要なのかもしれません。

かといって「表現のための訓練」は簡単なのか?というと、これまたそうではないというのが実感です。このスキルアップクラスが行なおうとしているのは、自由で創造性にあふれる柔軟な表現を生み出す為の、最低限必要な力を養おうということであり、表現できるようになる為の身体や、意識を鍛えることだといえます。言い換えれば結局「表現するための訓練」そのものかもしれないと改めて考えました。

2012年6月7日木曜日

できないことの自覚

高槻でのスキルアップクラスの3日目。
本日のファシリテーターは田中遊さんでした。まず受講生に「何をスキルアップしたいのか?」を話してもらうところから始まりました。
 さて、そもそもスキルアップと講座のタイトルに謳っているように、この講座は「演技技術の向上」を目指しているのですが、「じゃあ具体的に、何を向上させるの?」ということは実は大変難しい問題です。2時間×4日の講座で「スキルアップ」が果たせるの?と問われれば、これもかなり難しいと答えざるをえません。演技の要素は多様でかつ一人一人にとって演技における課題もまちまちです。どんな演技がいい演技なのかその価値基準ですら曖昧です。もちろん経験や目指す目標によっても違ってきます。ラボではいろいろな演劇に役立つ「基本的な技術」に焦点を定め、そこを重点的に訓練することをコンセプトとしていますが、そもそも「何を基礎技術とするのか」についても、いまだ議論や検討を続けていますし、どの程度を目指すのかについても意見が別れる所です。(講師陣と勉強会を持って、だんだん明確にしていこうとしている途中です)それにしても、最低限必要といえる技術でも講座で田中さんがおっしゃっていたようにすぐには身に付きません。「(思い通りにならない)身体や意識を自在にするためには、訓練の継続が必要」というのが、やはりあたりまえのことです。
 しかし、あえてこうした講座を行う理由の一つは、「じゃ、自分は何をスキルアップするの?」の「何」を見つけることが大事だからだと思うからです。自分の問題がはっきりすれば、日頃の練習や目的意識が向上すると考えられるからです。ひいては上達も早くなるという訳です。
今日の田中さんのワークショップはその「何」を見つけて帰ってもらうことが大きなテーマだったように思いました。シアターゲームやエクササイズを行なう中で、田中さんはそれが役者になぜ必要なのか、多くの「ヒント」を与えてくれます。「ピン」とくることも「?」なこともあったと思いますが、経験も関わり方も違う参加者ですから、全ての人に全て等しく響かないのは当然です。ワークの体験や田中さんの「ヒント」を通じてそれぞれが、自分にとっての「何」をつかんでいただければ、それがスキルアップへの大きな一歩だと思います。