本日から3回は、平岡秀幸さんが講師を務めます。
レッスンにあたって平岡さんはまず、俳優トレーニングとはどういうことかをわかりやすく説明して下さいます。しかし、身体や心の状態など感覚的なことはなかなか言葉で説明しづらいものです。たとえば「つながっている状態のからだ」という表現が出てくるのですが、言葉だけではよくわかりません。「感情もふくめて、声や身体の状態がすべて連動しているからだの状態」とでも言い換えられるかもしれませんが、そう変えたところで、ピンと来ない方が多そうです。「つながった(繋がった)身体同士がつながりを持てる」とそれは発展するわけですが、なぞは深まるばかりです。

そうした説明しづらいことがら(状態)は、やはり体験したり、自分や他人の状態を観察することで、「なるほど」と腑に落ちる(わかってくる)ようになってきます。違いがわかるようになることは、上達の早道です。漠然と芝居を見ていると「なんとなく、たいくつ」ぐらいにしか感じませんが、沢山芝居を見ていたり、注意深く演技を見る癖をつけていると、より具体的にどうしてそうなるのかが見えてきます。完成度が高い舞台は出演者それぞれの演技一つ一つとっても、レベルが高く、面白い(引き込む力が強い)が集積している舞台です。目指すのはそうした舞台に関われる役者な訳ですから、その違いを見抜く目を持たなければならないのは道理です。よくワインをたしなむ通(つう)には良いワインがわかりますが、飲まない人には良くわからないのと同じように、演技をしたい人はそういう意味からもまずは演劇を含めた多くの「演技が関わる作品」を見ることが大事だと思います。「量」は見る目の向上につながります。そして、この講座でも言われている通り「意識して注意深く見る」ことはその向上のスピードを速めます。そして、もう一つ私が大事だとおもうのは、「素直に見る」ということです。レッスンをお金を払って受けているわけですから、習ったことは早く結果につなげたいものです。なので、ついわかったふうに思いたいのが人情です。ですが、とても大事なのは無理してわかったふりをするよりも、いまはピンとこないことを受け止めることの方です。説明されることばが本当に腑に落ちるまで、待ってみることなのです。
冷静に考えるとこうした講座では「これ、何になるの?」みたいなエクササイズもあったりするわけです、そして、「これやったことある」みたいなこともあるかもしれません。それらはやった経験があるから何かなるものではありません。毎回新鮮な感覚で、すなおにそれらを受けて、そして得た感覚をそのときそのときで楽しんでいくうちに、ピンと来なかった謎が「すっと」解けてゆくようなものだと思うのです。