2005年に始まった、劇研アクターズラボの原点、スキルアップクラスが約1年間の休止を経て今日から再始動しました。休止に至った主な理由は受講者の減少だったのですが、今日の再開に至るまでには私達の中で様々な葛藤がありました。
さて、このスキルアップクラスは京都界隈で活動する劇団の多くが、練習を我流に頼る状況のなかで(専門的な教育を受けた人数がわずかな中で)、私達の活動が問題提起となり、役者を志す皆さんの向上を促す刺激になることを目標に、2005年から休止に至る約6年間活動を行ってきました。しかし、年を追う毎に参加者数は減少し、長く続けられる者はほとんどいなくなりました。訓練が成果を上げるには相応の時間を要します。週2時間程度練習を行ったからといって、3ヶ月で格段に技術が向上するということことは、まずありません。ある程度時間をかけた訓練を行ってこそ、成果は現れるはずですが、その時間を耐えることなく多くの人が講座を去っていってしまいました。
私達はどうすれば彼らの動機を維持できたのか、どうすれば技術向上の成果を実感できるようにさせられたのか、そもそも私達の力では無理ではなかったのか?講座の仕組みや授業そのものの内容までを講座を休止して再検討することにしたのです。
そして、私達の力が及ばない点、未熟な点も確認しながら、やはりもう一度挑戦していこうと決めました。もっと多くの時間を訓練に割けるようにしたい。もっと安く受講できるようにしたい、どうすればプロになれるのか、どうなると「売れる」のか、その道筋をわかりやすく示したい。・・・・・講座そのものの内容だけでなく、なぜ講座を受ける必要があるのかまでを具現するような、理想的な講座への願いは尽きませんが、現実はとても厳しい。
今回の再スタートは現実を見つめた上で、かすかな望みにかけようという、こうみえても苦渋の決断の上に成り立っています。無駄な挑戦になるかもしれませんが、地道な訓練を丁寧に繰り返すことで、演技に対する意識を高める努力を、志を同じくする講師の先生方ともう一度行いたいと思います。
演技を学ぶことは、せいぜい小劇場で活躍できる程度のこと、と過去の実績は物語っています。それは、とても残念なことです。私達はその程度のことを目指しているのではありません。演技が、舞台で活躍できるだけでなく、教育や福祉などの他分野でも社会に役立つさまざまな可能性を秘めていること、教養を養い人間性を高めることにも役立つことなど、さまざまな「力」があることを実感できるようにしたいのです。
できることが限られていることは、良くわかっています。この条件下で最大の成果を上げるにはどうしたらいいのか。講師や企画側だけではなく、今回は受講生も一緒になってこの問題と取り組んでいきたいと考えています。今までは講師と受講生の関係は「教える側」と「教えられる側」であったように思います。もちろんそうした側面は無くなる訳ではありませんが、今期は「自分達が一生懸命行なっていることの未来を一緒に考える場」でありたいと思っています。問題を共有しながら、それぞれが「自分だけ」で何かを解決しようとするのではなく、それぞれが解決に向けて意識を合わせて努力することで、何かが前に進むと期待しています。
まずは、スタートが切れて良かった。そして、これからは同志が増えるよう、頑張っていきたいと思います。