継続的な「訓練」の場を設けようと、こうしたワークショップ(講座)を始めて7年半が過ぎました。私たちの願いは「演技の向上」そしてそれが作品の向上につながること。そして、演技をする皆さんが、演技に誇りをもてることです。
そんな中で、私たちはどのような練習方法を提供できるのか考えてきました。指導する手法で分けるなら「訓練型」の講座にするのか、「気づき」を促すワークショップ型の講座にするのか・・・そして、今なお試行錯誤の中にいます。「気づき」とは演技に対する意識を高めたり、創造の面白さに気づいてもらうというような意味です。「訓練」は「先生」が「指導」し、繰り返し練習することで、技術を体得してもらうものです。ちなみにワークショップはリーダー(ファシリテーターと呼んだりします)が参加者と対等な立場で行ないます。参加者が演じることにまつわる様々なことを、ワークを通じて「自覚できる」よう導く点に重きを置いています。訓練型とワークショップ型どちらがいいと一概に言うことはできません。それぞれに一長一短があるのは当然なのです。まさに両方の良さを活かしながら、最も効率のいい方法を今も探っているわけです。
さて、開講当初は訓練型の必要性を強く感じていました。伝統芸能の役者さん、フルタイムの養成所出身の俳優さん達が、かなりの分量の訓練を行なっているのを考えても、そして彼らが明らかに鍛えられた身体と表現を獲得しているのを見ても、単純に訓練の差を感じてしまうのです。
一方でアルバイトやお仕事の傍ら演劇活動を続けるみなさんに、十分な時間が無いのも当前です。従って限られた時間の中でどれだけ効率的に演技力を向上させるか、その期待に応えるのが当面の使命だと思っています。
さて、そもそも「本番の舞台を想定せずに訓練だけを行なうのは、どうも気乗りがしない」というのも役者の本音なのかもしれません。しかし、日頃の練習(意識の持ち方も含めた訓練)が舞台の質を向上させ、ひいては演技に自信や誇りがもてるようになるのも真実だと思うのです。