2013年6月24日月曜日

演技する上での基本的な技術

平岡秀幸さんの講座(6月22日)について、企画の杉山が解説します。今日の講座のレポートというより、平岡さんの講座の特徴をお知らせしたいと思います。
 平岡さんはテキスト(台本)を使ったレッスンを行います。さて、演劇の練習ですから何はともあれセリフ術、「台本が無ければ稽古にならない」と思われる方も多いと思います。スキルアップクラスではあまりテキストを使わないので、受講された方からもっと「セリフがしゃべりたかった」といった感想が出たこともあります。(セリフを使わないのには意図があるのです。どうかご理解ください。)
 平岡さんのレッスンではセリフを使いますが、「語ること」よりセリフに書かれていることを「成立させることができること」(書かれている通りに演じられていること)にまずは視点がおかれます。やはり「セリフ術」よりも、身体と心(意識)が大事になります。セリフをしゃべるのは誰にでもできますが、そのシーンで行われていること、そのシーンでの役の状態や関係を作り出すことはなかなか難しいことです。考え方としては、その状態を作り出すことがまず大切で、その上でセリフなのです。そしてなおかつ、それができた上で「演出家の要求に応えられるよう、演技を変えることができるか」ということも重要になります。同じセリフ、シーンでもコミカルに見えることもあれば、深刻なシーンにもなります。台本に書かれた要素を崩さずに(成立させた上で)、そうした微妙なことを演じ分ける技術が俳優には要求されます。本日用いたシェークスピアの日本語訳のセリフはなどは、口語とだいぶ離れているので、身体の状態になじむようセリフを語る技術も必要となります。
 平岡さんはそうしたことができることを「演技する上での基本的な技術」と説明されます。映像での演技のような「ナチュラル」な演技でも、様式的な舞台での演技でも、「絶叫しつづける」演劇ですら、人と人との何らかのやり取り、葛藤やドラマが描かれる場合には、こうした基礎技術は活かされると思います。
 特に経験が浅い方は「(状態をつくるまえに)セリフだけをしゃべってしまう」といった悪いクセがつく前に、こうした技術の習得をお勧めします。